大腸がんの手術の方法と種類
●自律神経温存術
自律神経温存術(じりつしんけいおんぞんじゅつ)。
過去15年の間に格段に進歩した手術方法です。直腸がんの進行の度合いや、排尿機能と性機能を支配する自律神経繊維を手術中に確認し、必要に応じて自律神経を温存する手術法です。私たち日本の大腸外科医が世界に誇れる素晴らしい成果をあげる手術方法です。ガンを根本的に、徹底的に切除しながらも、同時に進行度に応じて神経を残すのです。全部の神経が残せれば、手術前と同様な機能、つまり男性では射精、勃起機能を完全に温存することができます。やや進んだガンにおいてでは、勃起機能のみを残す手術法もあります。
●肛門括約筋温存術
肛門括約筋温存術(こうもんかつやくきんおんぞんじゅつ)。
この手術方法が確立されていなかった以前は、肛門に近い直腸がんのほとんどの人に人工肛門がつくられていました。しかし最近では直腸がんの8割は人工肛門を避ける手術が可能となってきました。自動吻合器という筒状の機械を使って、がんの切除後に短くなった直腸の端と結腸の先端を縫合し、本来の肛門からの排便を可能にする手術法で、これが肛門括約筋温存術と呼ばれます。肛門から4cm以上、歯状線(肛門と直腸との境界)から2cm以上離れていれば、自然肛門を温存することが可能です。この手術と自律神経温存術を併用すれば、術後の機能障害をかなり軽減することが可能となりました。さらに最近では、歯状線にかかるような、より肛門に近い直腸がんであっても早期がんや一部の進行がんで肛門括約筋を部分的に切除して自然肛門を温存する術式が一部の専門施設で行われるようになってきました。しかし、高齢者の場合、無理に肛門を残すと術後の頻便などのため逆効果になることもあります。したがって、手術法と病期の進行度を正確に説明し、年齢、社会的活動力、本人や家族の希望などを考慮に入れ、総合的に術式を決定することが極めて重要となります。
●局所切除
局所切除(きょくしょせつじょ)。
早期がんや大きな腺腫に採用される手術法です。開腹手術ではなく、肛門からと仙骨近くの皮膚、直腸を切開しガンの腫瘍に接触する方法です。術後に、放射線療法や化学療法を追加する場合もあります。
●人工肛門
人工肛門(じんこうこうもん)。
肛門に近い直腸がんや肛門にできたガンは、人工肛門を造設する直腸切断術という手術を行わなければなりません。また、高齢者は肛門括約筋の力が低下しており、無理して括約筋温存術を採用すれば術後の排便コントロールが難しいと判断される場合もあるので、人工肛門による排便管理を勧められることが多いでしょう。どのような病院でも、ビデオ、患者会(オストメイト)や専門の看護師を通し、ストーマ(人工肛門のことです)教育(人口肛門を自分でケアできるようにその方法を勉強するのです)を充実させ、人工肛門管理の自立とメンタルケアに務めています。